「最初はグー」が世界で通じない理由 ── 世界のじゃんけんバリエーション
公開日: 2026-05-07
じゃんけんはグー・チョキ・パーの 3 手と思われがちですが、 世界には 5 本の指それぞれに役を割り当てた拳遊びや、 トカゲ・スポックを足した亜種、 そもそもの起源とされる三すくみまで、 形を変えて根づいたバリエーションが各地に伝わっています。
日本でじゃんけんと言えば、 「最初はグー、 じゃんけんぽん」 のかけ声から始まる遊び方が 定番です。 ところが、 この「最初はグー」 は世界の他の国では基本的に通じません。 そもそも 「グー・チョキ・パーの 3 手で勝負を決める」 という枠組みは同じでも、 名前・かけ声・指の 形・ローカルルールまで合わせるとバリエーションは非常に多く、 国や地域ごとに文化が違います。
起源は「蛇・蛙・なめくじ」 の虫拳
じゃんけんの直接のルーツとされるのが、 江戸時代に親しまれた 「虫拳 (むしけん)」という拳遊びです。 蛇 (じゃ) は蛙 (なめ) を呑むが、 蛙はなめくじ (くじ) を食べる、 そして なめくじは蛇を溶かす ── という三すくみの関係を、 親指 (蛙) ・ 人差し指 (蛇) ・ 小指 (なめ くじ) の指で表す遊びでした。 三すくみという発想自体は古来から日本で広く浸透していて、 中国から伝わった「拳 (けん)」 という指で勝負を決める酒席の遊びと結びついて成立したと 言われています。
その後、 江戸後期から明治にかけて石・紙・鋏の三つ巴へと整理されていき、 現在の「グー・ チョキ・パー」 として全国に定着しました。 同じ系統で江戸時代に流行った拳遊びには、 ほかにも 「狐拳 (きつねけん)」 「藤八拳」 などがあり、 三すくみの組み合わせは 1 つではなく、 お座敷の 余興として様々なバリエーションが楽しまれていたことが分かっています。
「最初はグー」 は日本だけのローカル文化
「最初はグー」 のかけ声は日本オリジナルです。 一説では、 ドリフターズの志村けんさんが TBS 「8 時だョ! 全員集合」 (1969-1985 放送) の打ち上げの席で、 みんな酔ってタイミングが 合わないじゃんけんを揃えるために言い出したのが起源とされています。 番組内の「じゃんけん 決闘」 コーナー (1981-1982) などで全国の子どもたちに広まったと言われ、 現在では日本の じゃんけんに欠かせないかけ声として定着しました。
海外では「Saisho wa guu!」 と言ってもまず通じないので、 多人数の場では「Rock, Paper, Scissors, Shoot!」 のような現地のかけ声に合わせる必要があります。
世界の「じゃんけん」 リスト
各国でどう呼ばれているかを並べてみると、 文化のグラデーションが面白く見えてきます。
- 英語圏 (米・英): Rock-Paper-Scissors / Roshambo (Rochambeau)
- フランス: Pierre-papier-ciseaux (ピエール・パピエ・シゾー)
- ドイツ: Schere-Stein-Papier (はさみ・石・紙の語順)
- 韓国: 가위바위보 (カウィ・バウィ・ボ。 ハサミ・石・布の語順)
- 中国: 石头剪刀布 (シートウ・ジエンダオ・ブー)
- ベトナム: Oẳn tù tì (オアン・トゥ・ティ。 グーは búa = ハンマー、 パーは bao = 包む、 チョキは kéo = ハサミ)
- フィリピン: Jack en poy (ジャッケンポイ。 日本語の「じゃんけんぽん」 が音として伝わったとされる)
国によって 3 手の呼び方の語順 (= 強さの言及順) が違うのも面白いところです。 日本語の 「グー・チョキ・パー」 は石 → 鋏 → 紙の順ですが、 中国の「石头剪刀布」 は石 → 鋏 → 布、 ドイツの「Schere-Stein-Papier」 は鋏 → 石 → 紙と、 並びがまちまちです。
3 手じゃ足りない人のための拡張ルール
「3 つだと早めにあいこになりやすい」 という弱点を補うために、 手を増やすバリエーションも 広く遊ばれています。 もっとも有名なのは Rock-Paper-Scissors-Lizard-Spock で、 1990 年代に Sam Kass と Karen Bryla が考案したものです。 米ドラマ『ビッグバン★セオリー』 でシェルドンが解説したことで一気に世界的な定番になり、 番組内ではしっかり創作者の Sam Kass がクレジットされています。 5 手に拡張するとあいこの確率が下がるので、 「3 回連続あいこ」 のような体感的なストレスが減るのが利点です。
じゃんけんは即興のローカルルールで進化する
実は地方や小さなコミュニティ単位で、 独自の「あいこ続行ルール」 「最後の 1 人が決めるルール」 「グーで勝つと 2 点」 などの追加ルールが日々生まれては消えていきます。 つまり、 じゃんけんは 3 手のシンプルさを保ちながら、 文化や場の都合に合わせて柔軟に進化してきた、 きわめて適応力の 高い遊びだと言えます。