JANKEN← Back to columns
🦎

Janken in the wild — the side-blotched lizard's three-color mating cycle

Published: 2026-05-07

Side-blotched lizards in the American west have three throat colors that beat each other in a perfect rock-paper-scissors cycle — janken really does exist in nature.

じゃんけんは「人間が思いついた、 ちょっとひねった遊び」 だと思われがちですが、 実は自然界 にも 「グー・チョキ・パー」 とそっくりな三すくみが存在します。 主役はカリフォルニア州を 中心にアメリカ西部の岩場に生息する小さなトカゲ ── サイドブロッチトカゲ (Side-blotched lizard、 学名 Uta stansburiana) です。

喉の色がそのまま戦略になる

サイドブロッチトカゲのオスは、 喉の色が個体ごとに 3 種類に分かれています。 オレンジ・ 青・黄。 そして、 この色によって繁殖戦略がガラッと違うのです。 カリフォルニア大学サンタ クルーズ校の Barry Sinervo らが 1996 年に報告した研究で、 これらの戦略がじゃんけんと同じ 「三すくみ」 になっていることが分かりました。

  • オレンジ (パワー型): 体が一番大きく、 攻撃的。 広い縄張りを構えて複数の メスを囲い込む。 青を圧倒する力で勝ちに行くタイプ。
  • 青 (ペアボンド型): 中くらいの体格。 一匹のメスとペアを組んで一緒に縄張り を守る。 力ではオレンジに負けるが、 黄を見破って撃退できる。
  • 黄 (擬態型): 体が小さく、 喉の色がメスに似ている。 オレンジの広い縄張りに 忍び込んで、 オレンジが他のオスと喧嘩している隙にメスと交配する。 オレンジには勝つが、 青のペアの守備には弾かれる。

つまり オレンジは青に勝ち、 青は黄に勝ち、 黄はオレンジに勝つ。 これは グー・チョキ・パーそのままの関係です。

ある世代に増えすぎたタイプは、 次の世代で必ず負ける

この三すくみが面白いのは、 個体群全体で見たときに「数の循環」 が起きる点です。 ある年、 オレンジが大量に繁殖したとすると、 翌年は「オレンジに強い黄」 がそのオレンジを出し抜いて 子孫を残す。 すると次の年は黄が増えるので、 今度は「黄に強い青」 が伸びる。 さらに翌年は 「青に強いオレンジ」 が……と、 数年単位でぐるぐる循環することが、 長期観察で確認されて います。

ナッシュ均衡で言えば、 3 タイプが同じくらいの割合でいる状態が安定なのですが、 実際の 個体数は均衡点の周りで波打ち続けます。 「最強の戦略」 が存在しないので、 どのタイプも 絶滅せずに共存できるのです。

じゃんけんは生物学のテーマにもなる

サイドブロッチトカゲ以外にも、 大腸菌のあるグループ間で似た三すくみ関係が観察されたり、 植物群落の競争で同じパターンが見つかったりと、 「ジャンケン的なダイナミクス」 は生態学・ 進化生物学の大事なテーマです。 じゃんけんは、 単なる人間の遊びを超えて、 自然界が「最強 じゃない多様性」 を維持するために使う、 ある種の汎用的な仕組みでもあるわけです。